2014/12/24

現地報告(12/20)≪特別篇≫

活動日:2014.12.20
報告者:奥原 幹雄


≪特別篇≫

2014年12月20日(土)
『北海道・東北臨床宗教師会発足式&カフェ・デ・モンクin気仙沼』

 この度、北海道・東北臨床宗教師会が発足されることとなり、発足式が12月20日(土)11:00から気仙沼教会を会場に行なわれました。それに併せて13:00からは気仙沼市の五右衛門ヶ原野球場仮設住宅にて、カフェ・デ・モンクが開催され臨床宗教師による傾聴活動が行われました。
 今回、臨床宗教師の『北海道・東北臨床宗教師会』が発足されることとなった背景は、今年の12月で第6回目の臨床宗教師研修を終え、全国でおよそ100名近い臨床宗教師が誕生し、これからの活躍が期待されているところであります。修了生も研修を終えたらそれで終わりではなく常に学ぶ姿勢が必要であり、研修での学びをどう社会のなかで活かしていくか個人の活動や取り組みが求められています。
 その為、既に各地域でも同様の支部や会が発足しており、九州支部、関西支部などに続く形で、この度北海道・東北の臨床宗教師会が発足する運びとなりました。本会は、まずは東北大学実践宗教学寄附講座の臨床宗教師研修を修了した24名でスタートし、会員相互の研鑽、情報交換、交流を目的とし、各地域で活動されている宗教者の方々との連携を模索しながら今後の活動を展開していく予定です。同会の活動の第一歩として、同日午後に気仙沼市五右衛門ヶ原野球場仮設住宅でカフェ・デ・モンク(傾聴喫茶)を開催しました。

【発足式】
 気仙沼教会を会場として、北海道・東北臨床宗教師会発足式が行なわれました。はじめに会発足に際して、金光教式でのご祈念を参加した24名全員でさせて頂きました。ご祈念の次第は、「拝礼」「神前拝詞」「天地書附奉体」「東日本大震災復興祈願詞」「東日本大震災御霊追悼の祈り」を奉唱し、「拝礼」。続いて、私が震災後の気仙沼の状況や我々のボランティア活動について紹介させて頂きました。






 次に、北海道・東北臨床宗教師会の代表・高橋悦堂師(曹洞宗)からの趣旨説明と挨拶があり、
続いて、川上直哉牧師(日本基督教団/心の相談室)、金田諦応師(曹洞宗/カフェデモンク主宰)からの激励の言葉がありました。




 
震災をきっかけに誕生した臨床宗教師ですが、第6回の研修を終えて全国各地に100名もの修了生が誕生しました。そして各地に支部や会が生まれ、相互研鑽や情報交換などを通してネットワークが生まれています。それは宗派の垣根を越えて、社会のなかで「人の助かり」のために宗教者はどんな役割を果たすことが出来るだろうか、という模索そのものであると思います。
 まだ始まったばかりの活動であり、今はまだ四つん這いでハイハイによる前進という状態ですが、ニーズはあると確信しております。捕まり立ちが出来るようになり、独りでよちよち歩きが出来るまでは、もう少し時間も経験も必要だと思いますが、まずはその第1歩を踏み出した発足式でした。
 今回、特に嬉しかったのは新たな仲間との繋がりを持つことが出来たことです。第6回目の研修を受講した方の中に気仙沼市の隣の南三陸町の曹洞宗の方がおりました。話しを聞いてみると、なんとこの方のお母さんが気仙沼教会の信者さんで震災で行方不明となったSさん(志津川町で布団屋さんを経営していた)のお店で働いていた方であり、Sさんご夫婦をよくご存じだったのです。なんと言う繋がりであろうかと、ご神縁を感じました。身近に仲間がいることは、とてもこころ強いことです。最後に発足式を記念して、みんなで記念撮影をいたしました。こども達も入れて頂き、よい記念となりました。



【カフェ・デ・モンクin五右衛門ヶ原野球場仮設住宅】
 発足式を終えて、12:30には五右衛門ヶ原野球場仮設住宅で、カフェ・デ・モンクの準備に取り掛かりました。クリスマスが近いという事もあって、今回の設定は「カフェデモンク・クリスマススペシャル」です。カフェデモンクはお坊さんが運営する傾聴喫茶ですが、今回はお坊さんによるクリスマス会というちょっと風変わりで、更に牧師さんによるお祈りの時間があり、バグパイプによる讃美歌の演奏が加わり、他ではお目にかかれないスペシャルなクリスマス会となりました。会場の準備が整うと、住民の方が早速集まってきて、それぞれケーキと飲み物を受け取って、席に座ります。臨床宗教師たちもテーブルに加わって、お茶っこがはじまりました。


 
 



 会場全体が落ち着いたところで、中澤竜生牧師(基督聖教団仙台西教会)によるクリスマスの祈りが行なわれました。会場にいた人達は、首をたれて祈りの言葉に耳を傾け、しばし神聖な雰囲気に浸りました。





 お祈りが終わると、バグパイプによる讃美歌「アメージング・グレイス」の演奏がはじまり、音色が集会所の中に響き渡りました。奏者はお馴染みにの加藤健二郎さんです。今回は餅つきイベントにあわせて気仙沼に来られており、到着早々にカフェデモンクに駆けつけて下さいました。今回は、ギターリストの渋谷虎太郎さんとの初コンビでの演奏活動となりました。一瞬にして、集会所が異空間となり住民の方や臨床宗教師の方もバグパイプの演奏に聞き入っていました。

 カフェデモンクの特徴は、宗教者による傾聴喫茶です。愚痴や文句や、普段の生活ではなかなか話すことのできない心の中にしまっている事など、何でも話してもらい、宗教者が聞かせてもらうという傾聴活動です。

カフェにあるメッセージボードには
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Monkは、英語でお坊さんの事。平穏な日常に戻るには長い時間がかかると思います。あれこれ「文句」の一つも言いながらちょっと一息つきませんか?お坊さんもあなたの「文句」を聞きながら一緒に「悶苦」します。
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 ボランティア活動でのお茶っこにはない、カフェデモンクならではの雰囲気があり、住民の方々も自然な形で、宗教者に話しを聞いて貰っていたようでした。なかには目に涙を滲ませながら話しをしている住民さんもおられ、少しでも心に抱えていることを話し、こころが軽くなることが出来れば良いなと思いました。




 頃合いをみて、カフェデモンク恒例のお地蔵さん作りやビーズを使ったお数珠作りなどもおこない、住民さんも楽しくお喋りしながら、手を動かしていました。参加したほとんどの方が修了時間の16:00頃まで残ってくださり、楽しんでくださっていたようです。

 会場の片づけが終わり、最後に参加者の一人が言っていたことが印象に残りました。「震災後のはじめのころはお坊さんを見ただけで涙がこぼれた」と。被災地で活動している仏教者も、「今でこそ、そういうことは無くなったが、震災直後はお坊さんの姿を見ると泣きながら駆け寄ってくる人もいた」と話されておりました。その被災者の心境は、多くの方に当てはまるのではないかと感じます。
 大津波という大いなる自然の力を目の当たりにして、命をつなぐために逃げることしか出来ませんでした。きっとあの時、できたことと言えば神仏におすがりすることしかなかったのではないでしょうか。しかし、多くの人達はすがる神仏を持っていない(神仏を知らない?縋り方を知らない?)。
 怒り、悲しみ、不安、悔い、恐れ、寂しさ、辛さ、表現しようがない心の状況を耐えていたのだと思います。そんな時に、ふと目の前に現れた宗教者(この時はお坊さん)を見て、神仏への救いを求めたて、お坊さんに泣いて駆け寄ったのです。
 今でこそ、生活が落ち着いて来ているので、あの時のような激しい感情は無いのかもしれませんが、抱えている問題は、本質的には今も変わらないと思います。特に高齢化率が進んでいる仮設住宅や災害公営住宅においても、生活への不安、将来(老い)への不安、寂しさなどを抱えている人達がたくさんいることは間違いのないことです。


 震災から4年が経過した2015年を迎えるにあたり、今後どのような活動ができるのかを求めていかなければならないと改めて思わされています。今回、このような北海道・東北臨床宗教師会の発足式を気仙沼教会で行うことが出来たこと、また気仙沼の仮設住宅でカフェデモンクを開催することが出来たこと、この大きなお繰り合わせに心より御礼を申し上げます。
この事が、少しでも地域における活動の足掛かりとなっていくことを願っております。

以上、ありがとうございました。